自社の独自能力を評価するのに一見関係がないように見えるのが在庫高予算である。しかし、売上高を左右する重要な役割を担っていることから、もし適正在庫高が不足しているため、販売機会を損なってしまうようなことがあれば、自社の独自能力が過小評価されてしまうことになりかねないし、これが過大であれば利益を圧迫してしまう。
このように、適正な在庫高をどの水準に設定するかによっても、売上や総利益に影響を及ぼすので、在庫高予算も独自能力を測定する場合の重要なファクターであることを念頭におかなければならないが、在庫が適正であるかどうかの判断は、業種や業態によっても異なることなので、売上高との相関関係を分析してみなければ軽々には判断できない。
いずれにしても、どのような販売方針を打ち出すかによって経営成績が決まると考えれば、独自能力と他のマーケティング戦略とは切り離して考えることはできない。このことは独自能力を客観的に評価し、他社との差別化を図る場合には厄介なことではあるが、逆に販売政策を巧みに織り込むことで独自能力が高まる可能性があるといことでもある。
実際の市場展開を観察してみてもわかる通り、狭義の独自能力が優れていることと、売上高との因果関係は必ずしも強くない。例えば、携帯電話などで考えてみても、コアとなる技術(独自能力)世界のトップレベルにありながら、世界のシェアではロシアや韓国の後塵を拝しているなどで説明できるのではないだろうか。
また、有名ブランド品などについても同じことが言える。何らかの形で獲得した名声はその後マーケティングに多大な影響を与え、優れた技術であることは証明されていたとしても、メーカー品の強みにはかなわないといった例は珍しいことではない。こうした事実を熟知しながら、コアとなる機能よりも安心や保証を求めるといった心理である。
良品無印などはこうした消費者心理を巧みに捉え、マーケティング費用を最小限に抑える戦略を打ち出しているわけである。こうした事例をみるまでもなく、論理的な思考プロセスは疎かにはできないが、消費者の深層心理に訴えかける心理学的アプローチもまた、マーケティング戦略として重要であることも見逃してはならない。
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