マトリックス組織

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 マトリックス組織は、NASAのアポロ計画に参画した企業によって導入されたプロジェクト・マネジャー制から発生したものといわれでいる。ライン組織では部下への指示・命令は一人の上司からという原則であったため、多様化した社会環境に柔軟に対応するには、この原則とは異なる複数の指示・命令系統が必要となってきた。
 例えば、複数の製品事業部と複数の市場の組み合わせを考えてみると、特定の製品事業部の製品を特定の市場でマーケティングを展開する場合、それぞれの特質を十分に発揮されなければ、消費者のニーズにフィットした戦略を構築できないことになる。こうした目的を達成するために体系的に集合された組織がマトリックス組織である。
 マトリックス組織では、製品事業のような職能別組織とプロジェクト・チームを組み合わせた、ニ軸で構成された組織が一般的なものであり、組織のメンバーは二つの部門に同時に属していることになるから、二人の上司から指示・命令を受けることになる。したがって、機能別・製品別・地域別など三次元のマトリックスもあり得るわけである。
 マトリックス組織は、このように市場・製品・技術・地域など複数の分野への柔軟な対応が可能になる、不確実性の高い情報の分析が可能になる、人的・資金的経営資源の効率的活用などの点で多くのメリットが期待されているが、実際に運用するためには、更なる革新が求められるという皮肉な結果を招きかねないという側面もある。
 また、ライン組織とは異なり、命令一元化の原則を捨てることを前提に成り立つ組織であることから、どちらの命令を優先させるかといった権限関係の問題は、メンバーの立場からすればくすぶる可能性は払拭できないし、現実の問題としてはプロジェクトの目的を優先するチーム・マネージャーと職能組織の長とのコンフリクトにも課題が残る。
 このように理論的には優れた組織であると評価できる一方、中小企業では何故か導入されているケースは少ないように思われる。純理論的に考えれば、中小企業には馴染まないという根拠はないように思われるが、実際の運用に当っては、高い見地からプロジェクトの目的を理解したリーダーの存在が欠かせないことに原因があるように思われる。