中小企業の場合も法律的ならびに制度的には何等変わりはないが、実体としてはより取締役会は形骸化しているように思われる。新会社法では従来以上に業務統制機能を強化する内容にはなっているものの、反面、企業の自主性に任せる姿勢も見られるなど、中小企業にとっては旧来型の運用形態を容認するものとなっている。
前述のように、受託層である取締役会や全般経営層である社長は、ROI(投資収益率)、ROA(総資本利益率)などに配慮しながら、最終的にはROE(株主資本利益率)を最大にすることを請け負っていることになるので、その行動は自己統制されなければならないのであるが、そうした機能を果たしていないのが実態である。
わずかに、監査役が統制機能を果たす位置にはあるが、それとても実質的な機能は著しく制約されていると言わざるを得ないので、結果として株主総会が最終チェックをする形で運用されている。こうした馴れ合いの構造が、企業の社会的責任遂行能力を衰退させることに繋がってしまい、企業ぐるみでモラールを低下させてしまう。
そもそも、取締役とは何を取り締まる役職なのだろうか。この質問を中小企業の役員に向けてみると、大抵は部下である中間管理職や監督者の悦脱した行動を取り締まる役職であるという答えが返ってくる。これは、自らも部門管理を担っていることの現われでもあり、あながち的外れとは言い切れない面もあるが中核的機能ではない。
調整と決定が本来の機能である取締役会は、その構成メンバーである個人としての取締役を律するよう調整することが求められているのだが、その名称が権限の象徴として捉えられているため、その機能を代行する形で監査役が置かれている。新会社法では、取締役の解任を取締役会に求める機能を監査役に与えているのはそのためである。
中小企業では、実質的な権限は社長に集中しているため、企業家精神が旺盛で強いリーダーシップを発揮している場合は、このような制度的ルールを越えて1人3役をこなしているので、経営成績も概ね良好であるだけに、信託層である株主からも信任は厚いが、チェック機能が働かず、別の意味で形骸化が加速する虞もある。
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