ハイタッチ型とは、ハイテクなどのソフト化、サービス化、これらを融合させたシステム化といったベクトルを、面的機能商品の広がりとして捉えているのに対して、この平面に直行する立体的側面からみた場合の付加価値の質量のベクトルである。つまり、機能的な面よりも、精神的充実度などの心の豊かさを尺度とした場合の充実度を表現している。
例えば、そば屋の出前持ちなどは、伝統的で最も基本的なサービスであり、ここを原点としてそれぞれ充実したサービスが開発されていく。これを経済的合理性という視点から見れば、徒歩による出前が、自転車になり、自動車へと発展していくし、消費者の利便性という観点から見れば、電話による注文が、ネットによる注文へと日々進化を遂げている。
これに対して、ハイタッチ化とは、必ずしも経済的合理性という尺度では評価せず、あくまでも顧客の「インサイト:かくありたいという本音」にできるだけ迫ることに重点をおいているサービスである。したがって、場合によっては顧客のコスト負担も大きくなるが、それよりも、そうしたサービスを受けることによる充実感の方に重きを置いている。
ハイタッチ型の戦略によって、生存領域を確立している中小企業は確実に存在している。そこは特定の事業コンセプトによって定義された小さな市場で、リーダー型やチャレンジャー型の企業が踏み入ることのできない領域である。ここでは、付加価値が一定であれば、その内数であるコストは低い方が望ましいという経済原則によって支配されてはいない。
自転車に工具箱を積み、夜中でも駆けつけ家電製品の修理をしてくれる電気屋さんがいる。彼の凄いところは、技術はもちろん、廃棄になった古い部品をストックしていて、少々昔の製品でも、「修理すればまだまだ使えます」と、顧客を安心させてから仕事に取り掛かる。こうしたサービスを提供してくれる電気屋さんは当節貴重で誰も容易に参入できない。
もちろん、ハイテク化やサービス化に逆行することに意義あるわけではないが、便利さの陰で失われつつあることへの不安に応えるビジネスモデルは、中小企業に残存利益をもたらすボーナスポイントでもある。高齢化が進めば進むほど、ハイタッチ型戦略が希少価値を持つことになり、昔とは違う参加型のスモールなコミュニティビジネスが生まれる。