暗黙知を形式知に変換する仕組みは、IT化が進展している今日においては、それほど難しいことではないが、何故そうしたことが必要なのか、システムを導入すれば直ちにそれが可能になるのかという問いに答えられるものではない。必要性を切実に感じるという生みの苦しみがなければ、本物の仕組みは構築できない。
公共工事の談合体質をはじめ、一度築いた人間関係を解体し再構築するとなると、失われるものの大きさを経験的に熟知しているため、多少のリスクを内蔵していても改革を阻止した方が安全であると判断し、現在の枠組みに固執する道を選択してしまう。得意先との関係も然りで、担当者同士が一度築いた人間関係を温存したいと願う。
社外との関係ばかりではなく、社内的な配置転換の際にもよく聞かれることである。社員は配置転換を好まない傾向があり、強行するととたんに生産性が低下してしまうので、あまり積極的には行っていないなどである。なるほど一理ある対応ではあるが、今日の人員過剰、人材不足はこのようなシステムが温床になっていたともいえる。
このように従業員のキャリア形成という面では、硬直的な人事制度であるといわざるを得ないが、専門家が育つという意味では功績もあった。例えば社内においては優れた技術力が育ったり、得意先との関係では、良好な人間関係をバネに取引を拡大するといった場合である。これらのメリットを生かし、かつCDPも活発に行うことが狙いである。
すなわち、一方では従業員の配置転換などで人事の交流を活発化し、キャリア形成を目指しながら、他方では、これまで築いた良好な人間関係を形式知に変換し、組織内で共有化を図れれば、全社的に経営資源を積み増しすることができる。ITを活用することでこうした情報伝達が容易になったのである。
前述したように、暗黙知を形式知に変換する仕組みはシステムを構築すれば完成ではなく、これに魂を吹き込むことが成功の鍵となるため、経営者の強力なリーダーシップにより推進されなければ、ただの掲示板となってしまう。社員全員が情報発信者に対して疑問を投げかけたり、改善案を提言したりといったコミュニケーション促すことである。
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